名寄簡易裁判所 昭和40年(ろ)21号 決定 1966年2月24日
被告人 松田一吉
決 定 <被告人氏名略>
右の者に対する道路交通法違反被告事件につき、当裁判所は次のように決定する。
主文
本件公訴はこれを棄却する
理由
本件公訴事実の要旨は、被告人は、大型貨物自動車の運転免許を受けた者であるが、昭和四〇年一〇月二六日午後九時ころ北海道中川郡中川町佐久、佐久橋前国道において、運転免許証を携帯しないで大型貨物自動車を運転したものである、というのである。
本件記録によれば、本件につき昭和四〇年一一月八日略式命令の請求があり、前同日被告人を罰金二、〇〇〇円に処し、仮納付を命ずる旨の略式命令が発せられ、即日被告人に略式命令が告知され、同時に右罰金相当金額全額につき仮納付の裁判が執行されたこと、その後同年一一月二〇日検察官が正式裁判の請求をしたこと、および北海道上川郡下川町長村上貞次郎作成の戸籍謄本によれば、被告人は同年一一月一六日死亡したこと、以上の事実がそれぞれ認められる。
ところで、略式命令が被告人に告知された後に被告人が死亡したときは、正式裁判の請求期間内であつても、被告人死亡の時に訴訟係属は消滅し、事件は直ちに終了すると解するを相当とし、この理は、略式命令の附随処分である仮納付の裁判が執行されている場合であつても何ら変らないから、本件正式裁判請求は正式裁判請求権消滅後の請求としてこれを棄却すべき場合に当たるようにも思われる。しかし、正式裁判の請求がいつたん正式裁判請求期間内になされた以上、他に法令上の方式違反も認められない限りは、略式手続はもともと簡易な手続であつて、通常の公判手続に対して謙抑な性格のものであることを考え合わせ、刑事訴訟法三三九条一項四号前段を適用して、本件公訴を棄却すべきものとする。
よつて、主文のように決定した。
(裁判官 樫田寅雄)